- こ
- I
こ(1)五十音図カ行第五段の仮名。 軟口蓋破裂音の無声子音と後舌の半狭母音とから成る音節。(2)平仮名「こ」は「己」の草体。 片仮名「コ」は「己」の初二画。〔奈良時代までは上代特殊仮名遣いで甲乙二類の別があり, 発音上区別があったとされる〕IIこ(接尾)(1)名詞・動詞の連用形に付いて, 「こと」の意を表す。
「うそっ~」「慣れっ~」「知りっ~ない」「泣きっ~なしよ」
(2)動詞の連用形に付いて, 互いに…する, 互いに…して競争するなどの意を表す。「背中の流しっ~」「駆けっ~」「にらめっ~」
(3)擬声語・擬態語に付いて, 語調を整えたり, 意味を強めたりする。「ぎっちら~」「ぎい~ぎい~」「ぺちゃん~」「ごっつん~」
(4)名詞に付いて, 親しみの気持ちを添える。「あん~」「隅っ~」「根っ~」
〔上の語との間に促音が入ることが多い〕IIIこ【個】※一※ (名)ひとりの人。 自分自身。「~としての認識」
※二※ (接尾)助数詞。 物の数を数えるのに用いる。IV「みかん三~」
こ【処】名詞・代名詞に付いて, その場所を表す。V「こ~」「そ~」「あそ~」
こ【呼】〔call〕通信網を流れるひとまとまりの情報。VIこ【壺】中国, 古代のつぼ形の盛酒器。 殷周時代の青銅製の祭器がよく知られる。VIIこ【子・児】※一※ (名)(1)人間や動物から, 生まれ出るもの。 特に, 生まれ出て間もないもの。⇔ 親「~を生む」「腹に~を持った鮭」「犬の~」〔動物の場合「仔」とも書く〕(2)まだ一人前になっていない人間。 年少の男女。「都会の~は体力が劣る」「小さな女の~」
(3)両親の間に生まれた人。 また, 縁組により, その間に生まれたものと同じように養われている人。⇔ 親「~を思う親の心」「伯父夫婦の~になる」(4)(親しみの気持ちで)若い女性をいう語。 芸子をさす場合もある。「会社の女の~」「あの店はいい~がそろっている」
(5)キリスト教で, キリストのこと。 みこ。(6)もととなるものから分かれ出たもの。 また, 従属的なもの。「竹の~」「元も~もない」「~会社」
(7)愛する人。 また, 親しみを感ずる人。「はしきやし逢はぬ~故にいたづらに宇治川の瀬に裳裾濡らしつ/万葉2429」「熊白檮(クマカシ)が葉を髻華(ウズ)に挿せその~/古事記(中)」
(8)鳥の卵。「あてなるもの…かりの~/枕草子 42」
※二※ (接尾)上の語との間に促音が入ることもある。(1)名詞や動詞の連用形に付いて, その仕事をしている人, そのことに当たる人, そのような状態の人, そのためのものなどの意を表す。「売り~」「売れっ~」「馬~」「振り~」「背負(シヨイ)~」
(2)特に女性のする動作や仕事に付けて, それをする人が若い娘であることを表す。「踊り~」「お針~」
(3)名詞に付いて, そのような状態・性質の子供である意を表す。「ひとりっ~」「いじめっ~」「だだっ~」
(4)小さなものに付けて, 愛称とする。「ひよ~」「ひよっ~」「砂~」
(5)その場所や時代に生まれ育った人であることを表す。「江戸っ~」「団地っ~」「大正っ~」
(6)女性の名に付けて, それが女子であることを表す。 平安時代以降, 明治の頃までは身分の高い女性の名に用いた。「花~」「春~」
(7)人に対する親愛の気持ちを表す。 古く人名や人を表す語に付けて, 男女ともに用いた。「小野妹~」「我妹(ワギモ)~」「背~」
~で子にならぬほととぎす〔ホトトギスは卵を他の鳥の巣に産みつけてその鳥に育てさせるということから〕養い子は結局は実の子ではないというたとえ。~は鎹(カスガイ)子に対する愛情によって, 夫婦の間が緊密になり, 夫婦の縁がつなぎとめられるということ。~は三界(サンガイ)の首枷(クビカセ)・(クビツカセ)〔「三界」はすべての世界の意〕親は子に対する愛情に引かされて, 一生自由を束縛されてしまうということ。~養(ヤシナ)わんと欲すれども親待たず〔韓詩外伝「樹欲静而風不止, 子欲養而親不待也」による〕子が親に孝養を尽くしたいと思う頃には, 親は死んでいて, その志を果たすことができない。 樹静かならんと欲すれども風やまず。 風樹(フウジユ)の嘆(タン)。~故(ユエ)の闇(ヤミ)我が子への愛ゆえに, ともすると親は思慮分別を失いがちであるということ。 子を思う心の闇。~を思う鶴(ツル)〔鶴は子を思う心が強いといわれることから〕母親の我が子への強い愛のたとえ。→ 焼け野の雉夜の鶴~を棄(ス)つる藪(ヤブ)はあれど身を棄つる藪はなし生活に困ると最愛の子供でもすてるけれども, 自分の身だけはすてることができない。~を見ること親に如(シ)かず子の性質や才能は, 親が一番よく知っている。 子を知る者は親。~を持って知る親の恩自分が親となり子育ての苦労を経験して, 初めて親のありがたさが分かるものだ。VIIIこ【孤】ひとりぼっちである・こと(さま)。IX「寒樹の夕空に倚(ヨ)りて~なる風情/金色夜叉(紅葉)」
こ【小】名詞・形容詞・形容動詞, まれに動詞に付く。(1)形や規模が小さい, 量が少ない, 程度が軽いなどの意を表す。「~山」「~皿」「~銭(ゼニ)」「~降(ブ)り」「~ぜり合い」「~高い」「~突く」
(2)意味を和らげたり, 親愛感を加えたりして, 主観的な感じ, 印象を添える。 どことなく…の感じだ。「~粋」「~憎らしい」「~ざっぱり」「~しゃく」
(3)一人前ではない, 大したものではないの意を表す。 また, 卑しめる意を表す。「~坊主」「~ざかしい」「~才(ザイ)」「~面(ヅラ)」「~役人」
(4)体の一部分を表す名詞に付いて, 表現が露骨にならないようにする。「~鬢(ビン)」「~首をかしげる」「~膝を打つ」「~腰をかがめる」
(5)数量を表す名詞または数詞に付いて, それよりすこし少ないがほぼそのくらいの意を表す。「~一里」「~一畳」「~半日」「~一倍」
→ こっ(接頭)Xこ【弧】円周の一部分。 また, 放物線などの曲線の一部分。XI「~を描いて飛ぶ」
こ【戸】※一※ (名)(1)家の出入り口。 戸口。 また, とびら。 と。(2)家。 家屋。 また, 一家。(3)律令制で, 地方行政における社会組織の最小単位。 戸籍記載・賦課の単位でもあり, 里や郷を構成する。→ 郷戸※二※ (接尾)助数詞。 家や世帯の数を数えるのに用いる。XII「戸数百~」
こ【故】(1)人名や官職名などに付けて, その人がすでに死亡していることを表す。「~右大将殿」
(2)官職名に付けて, それが以前の官職であることを表す。 前の。XIII「大夫には~中宮の大夫/栄花(暮待つ星)」
こ【木】〔「木(キ)」の交替形〕き(木)。 多く他の語と複合して用いられる。XIV「~立ち」「~の葉」「~の根の根ばふ宮/古事記(下)」
こ【来】カ行変格活用動詞「く」の命令形の古形。 こい。「旅にても喪なくはや〈こ〉と我妹子が結びし紐はなれにけるかも/万葉 3717」「こち〈こ〉, と言ひて/大和 103」
〔平安中期以降には, 「かしこに物して整へむ, 装束(ソウズク)して〈こよ〉/蜻蛉(中)」「こち〈こよ〉, と呼びよせて/宇治拾遺 5」のように間投助詞「よ」を添えた「こよ」の形も用いられるようになり, 以後「こよ」が次第に優勢になってゆく〕→ 来るXVこ【格】(1)障子や格子の桟。 子(コ)。(2)格天井(ゴウテンジヨウ)の竿材。 また, それぞれの格子。(3)梯子(ハシゴ)の横木。XVI「階(ハシ)の~をななめにおりくだりて/著聞 14」
こ【此・是】近称の指示代名詞。 その場にある, また話題の場所・物・事柄などを指し示す。 ここ。 これ。XVII「明日よりは恋ひかも行かむ~ゆ別れなば/万葉 1728」「風吹けば浪の花さへ色見えて~や名にたてる山吹の崎/源氏(胡蝶)」「さば, ~は誰がしわざにか/枕草子 138」
こ【海鼠】ナマコの古名。 [和名抄]XVIIIこ【濃】名詞に付いて, 色の濃いことを表す。 こい。XIX「~紫」
こ【籠】(1)かご。「~もよ, み~持ち/万葉 1」
(2)「伏(フ)せ籠(ゴ)」に同じ。XX「なえたる衣(キヌ)どもの厚肥えたる, 大いなる~にうちかけて/源氏(帚木)」
こ【粉】固体が砕けて細かになったもの。 こな。「米の~」「身を~にして働く」
~=が(=を)吹・く干し柿・いも・かぼちゃなどの表面に, にじみ出た糖分が結晶して粉状となって付着する。 また, カビが粉のように一面に生える。~にする⇒ 身(ミ)を粉にする~にな・るひどく疲れる。XXI「浮世の用にせめられて~・りさうだわな/洒落本・傾城買二筋道」
こ【胡】中国で, 漢以前には北方の匈奴(キヨウド)の称。 のちには西域民族の総称。 えびす。→ 五胡XXIIこ【蚕】かいこ。XXIII「母が養(カ)ふ~の繭隠(マヨゴモ)り/万葉 2495」
こ【鈷】古代インドの武器を形象化した, 仏教で煩悩(ボンノウ)を打ちくだく意味で用いる法具。→ 金剛杵XXIVこ【鉤】巻き上げた簾(スダレ)を掛けて置くかぎ形の金物。「御簾の帽額(モコウ), 総角(アゲマキ)などにあげたる~のきはやかなるも/枕草子 201」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.